10月の例会では、坂口弘さん、前澤虎義さんが働いていた三国工業(*注)の労働者だった、安藤次男さんの話をうかがいました。
安藤さんは、幸い連合赤軍の事件に連座することもなく、現在は東北の郷里で暮らしています。
労働者の視点
東北弁で素朴に語る安藤さんは、もう還暦も過ぎ、久しぶりの上京。定刻をだいぶ遅れて待ち合わせの駅にやってきた。
なにやら、竹を束ねたものを杖のようにして持っている。聞くと、友人にヌンチャクの材料としてあげることになっている、とのこと。
「相変わらずだ」と、一緒に待ち合わせていた前澤君が言った。
三国工業での活動の話は、すこぶる面白かった。
日本共産党員に本を借りようとしたら、貸してくれなかった。しかし、坂口君はすぐに貸してくれた。それが付き合いの始まりだった。
がっかりしたのは、「労働者が革命の原動力」といっていた革命左派が工場から出て行ってしまって、大衆運動から離れてしまったこと。
工場移転の話が出たとき、「坂口とトラがいたらなぁ」と言う者がいたという。
今回の記録は、ニューフェイスの女性がテープを起こしてくれることになっている。
初参加の I さんから
……10月の例会に初参加した I さんから、感想をいただきました……
このたび、ひょんなことから初めて「残す会」の例会に参加させていただきました。
雪野さんも前澤さんも、頭の中では、自分より少し若い20代の青年でしたが、実際にお会いすれば当然ながら、私の両親と同年代の、落ち着いた上品な「大人」でした。そして、当時の本を読みあさっている私の方がむしろ過去に属しているように感じるほど、皆さんが「今」を生きている感じを受けました。
他の方々も皆、人当たりよく、温かい雰囲気ではありましたが、これまでに会ったことのある誰かに似ている人は、一人もいませんでした。
中でも今回お話を伺った安藤さんは、自由奔放だけれど少しシャイなキャラクターと、細かな記憶力とを持つ個性的な男性で、飾り気のない言葉で楽しませてくださいました。
お話の内容が興味深いものであったのは勿論ですが、前澤さんとのやり取りを聞いていると、坂口さんも含めた当時の工場仲間の雰囲気が想像できて、微笑ましかったです。
今回は生まれて初めて「テープ起こし」を承ることとなりましたが、連赤に関係する仕事ができることは大変な喜びです。「残す会」の皆さま、快く参加を受入れていただき、ありがとうございました。
* 三国工業
東京都大田区下丸子に本社のあった、自動車部品メーカー。現在は本社は千代田区に移転しており、下丸子工場はない。